電考房閑話(その8)
最近、電車で通勤するようになって、ちょっと思い出したことがあります。
7年ぐらい前、鎌倉駅から中目黒駅まで通勤していた時期がありました。
電車は、鎌倉駅から横浜駅まで横須賀線で行き、横浜駅からは東横線となります。
朝の通勤ラッシュ時の横須賀線は、殺人的な混みようではないものの、座ることはよほどの僥倖がなければ不可能です。
毎朝、私はだいたい同じ時間の、同じ車両に乗っていたのですが、ある時、妙な人間の妙な行動に気づいたのです。
鎌倉駅の次の停車駅である北鎌倉駅から、いつも乗ってくる小太りのオバちゃんが、乗車するとすぐに車内をキョロキョロと見渡すのです。
この妙な行動に気づいて、オバちゃんを見ていると、誰かを探している風で、お目当ての人間が見つかると、相好が緩むのがわかるのです。
誰か知り合いの人を見つけているのかな?と、最初思ったのですが違うのです。
そのお目当ての人は、ふつうのオッサンで、おそらく久里浜駅あたりの始発から乗って来るのだと思いますが、いつも座っています。
オバちゃんは、そのオッサンを見つけると、その前に立ちます。相当混んでいて、オッサンの前のつり革にいっぱい人がいても、かなり強引に割って入って立つのです。
皆さん、なぜだと思いますか?
実は、そのオッサンは北鎌倉駅の次の大船駅で、必ず乗り換えるために席を立つのです。必然的に、その前に立っている乗客が、その空いた席に座ることできます。
そうなのです。
北鎌倉駅からのってくるオバちゃんは、そのオッサンがいつも座っていて、しかも大船駅で降車することを知っていて、その席を確保しようとしていたのです。
「へえー、オバちゃん、見かけによらず、なかなか頭脳プレイするじゃん♪」
ごくたまに、オッサンが乗っていないことがあるのですが、その時のオバちゃんの落胆した様子には、その意味がわかっている私には、朝の隠れた爆笑となりました。
その後、ほどなく、私は九州転勤となり、横須賀線に乗ることもなくなったのですが、
今日、久しぶりに思い出しました。
「あのオバちゃん、まだ頭脳プレイしているのかなあー?」
ニヤついていると、前に座っているOLが、気味悪そうに私を見ていました(笑)
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